2008.12.03 Wednesday
顔まで布団をかぶって寝ていたら、「ソーセージ・パンの先っちょみたい。」
と嫁に言われたノーブル佐々木です。
悪気はなくても、心に突き刺さる嫁の一言。
25年という時の重みが、言葉の先端、すなわち剣先に収斂したような、熟
練の技を感じる一言。
もう、ずたずた・・・
■忘年会が終わった
前夜、大沢温泉の自炊部で忘年会し、翌日の午前中は、同じ面子で会議。
お昼を過ぎる頃には、それも終わり、軽い疲労と開放感の中、それぞれが家
路につく。
そのまま帰るもの、何処かに寄って行くもの、お祭り後のいつもの風景。
会長の高橋氏が旅館の会計を終えて部屋に帰ってくると、小原女史とオラホ
の3人がこうして残っていた。
このまま帰るのも名残惜しい雰囲気も手伝って、3人で昼食をすることにな
り、旅館の食堂でざるそばを食べた。
月曜日の昼下がり、まだそれほど客のいない旅館の食堂で、まったりとした
時間が過ぎていく。
■写真
旅館を出る時、荷物の多い高橋氏が少しもたついていた。
先に靴を履いたオラホは、その間、玄関周辺を何気なく見渡していた時、下
駄箱の上に飾られている一枚の写真に目がとまった。
この旅館の露天風呂だ。
そこに数人の半被(はっぴ)を着た中年の女性が風呂に腰まで浸かって、湯
船に浮いている大木を取り囲んでいる。
なんかの儀式のようだ。
なんだろう?と思い近寄って、よ〜く見ると、大木のこちらに向いている先
端が丸みを帯びている。
見たことがある形だ。
おおお〜、オラホも持ってるあれだ、男根だ。
よく子宝祈願とかで、テレビでもよく見かけるやつ。
ここの場合は、魔除けとしてやるらしいが、なんで男根?とか思いながら見
ていた。
たぶん、にやけてたと思う。
おっさんらしい図だ。
そうこうしている内に、高橋氏も準備ができ、玄関口に揃ったところで、外
に出た。
「ありがとうございました〜。」と、後ろから声がする。
■呼び戻したもの
これをネタにしない手はない、と思い、今見た写真を2人に話すと小原女史
が言った。
「あ〜、あれね。そう言えば、あの形をしたキャンディーをここの売店で売
ってるのよ。」
「ぬぁに〜!?」
やっちまったなぁ〜、とは言わなかったが、喰いついたのは、勿論オラホ
だ。
「おおおお〜、それは買わないわけにはいかない。」
そう言うとオラホは、すぐさま踵を返して旅館に向かった。
「あ、売店のレジのすぐ横にあるからね。」
女史のフォローは、いつも的確でナイスタイミングだ。
玄関口の引き戸を開けると、客と思ったスタッフ〜が、いらっしゃいませ〜
と声を揃える。
ちょっと恥ずかしいぞ。
「え?いえ、ちょっと、買い物を忘れて…」
などと、墓穴を掘るような真似はオラホの自尊心が許さない。
「は?それは、どのようなものですか?」
とか、聞き返されたら何と答える、オラホ。
ここは、無視するが最良の策と見た。
オラホは、玄関口のすぐ真ん前にある売店の引き戸を開け、中に入ると、す
ぐ横にあるレジ周辺を見渡した。
しかし、レジ回りには、所狭しと商品が並べられており、お目当ての物が見
当たらない。
く〜、今は外に人を待たせていることもあり、時間を喰うわけにはいかない。
ここは、レジのおばさんに聞くしか手はないようだ。
「す、すみません。ここにすんごい飴がある、って聞いたんですけど…」
一瞬、あの感覚が蘇った気がした。
本屋で初めてエロ本買った時の感覚だ。
客がいなくなるタイミングを見計らって、普通の本の下にエロ本忍ばせ、レ
ジに持っていたあの時。
あ〜、オラホにもそんな‘ゆず’のような青々しく、酸っぱい時代があった。
いや、‘かぼす’だったか?
そんな思春期の思い出に浸る間もなく、おばさんは指さして言った。
「そこにございます。」
「即答かよ!」
オラホの心の叫びは誰にも聞こえることはなかった。
■導かれた者
オラホは、おばさんの指さす方へ導かれるように視線を移動する。
ん?どこだ?一瞬迷ったが、それは確かにそこにあった。
‘魔除飴’とある。
白い根幹にダークブラウンの先端のそれが、まるで松林に群生する松茸のよ
うに整然と立ち並んでいる。
お、よく見るとサイズが3種類ある。
いわゆるスリーサイズというやつか。
Sが380円、Mが580円、Lが1080円。
どーする自分。
Sでは、卑屈と思われるだろうか?
Lでは、身の程知らず、と思われるかもしれない。
よし、ここはMとすることにしよう。
まてよ、それではあまりに月並み、平凡なやつと見られるかもしれない。
人は、その人生において、様々な場面で選択を迫られるが、時としてその後
の人生に深く関わる重大な選択があると言うが、はたして、これがそれか?
それなのか?
■SとM
何秒経ったろう。
オラホの手の中には、SとMの2本があった。
そそくさと会計を済まし、2度目の「ありがとうございました」に見送られ
旅館を出て、先をゆっくり歩いていた2人に追いついた。
「Mは嫁に、Sは娘に買っちゃった。」
とか、意味不明な言い訳をするオラホ。
いちいち言い訳がましい自分が少しイタイ。
それから歩きながら少し話をして、駐車場に着くと互いに車に乗り込み、2
人とはそこで別れ、それぞれ家路についた。
帰りの車の中でオラホは、先ほど買った土産物のことを思っていた。
はたして、あのキャンディー、食すことがあるのだろうか?
あるとすれば、それは先端からか?
意表をついて裏筋から行くか?
卑猥だ。
卑猥すぎる図だ。
妄想は、澄んだ初冬の紺碧の空のように果てしなく、尽きることはなかっ
た。

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袋に入っている‘魔除飴’

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SとM,2本並べた‘魔除飴’

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‘魔除飴’近影
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