2017/06

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余った裾でバックが作れるノーブル佐々木です。

んん〜、やる気になれば連続アップもできるもんだ。
ということで、おたふく風邪后




■入院初日1

「人生、一寸先は闇」とよく言うが、50歳になった現在に至っても、男に三度も指先でころがされたのはこの数日間だけのこと。
その間オラホが発した言葉といえば、「はい」「痛い」だけ。
挙句の果てに、なにか期待していたわけでもないのに、妄想回路を暴走させられてロマンチックが止まらない。

おたふくウィルスは、オラホの精神まで蝕んでいるようだった。
そんなオラホが不幸指数盛岡最低値を更新したことを周りが知る由もなく、入院に向けた手続きは淡々と進んでいく。

まず、体重や身長などを測定し心電図もとった。
そんな事をしているうちに、おのずと興味は次に何を測定するのか、という方向に向きかけていたが、それも唐突に終わり病室に案内されることになった。

そこは、ナースステーションと扉一つで出入りができる四人部屋で、病院内全体が空調していなかったのに、ここはエアコンが効いていて快適だった。
これは紹介状のせいなのか?とこの時は思ったが、実際は感染力を持つ病気のため、できるだけ収容人数の少ない部屋をあてがわれていただけのようだった。
オラホのベットは、出入り口から遠い部屋の一番奥。

「これは軽〜い隔離だな。」

熱の割に意外と冷静に観察していたオラホだった。
ベットにつくと看護婦さんが、ポケットから体温計を出して熱を計るようにオラホに手渡した。
それを受け取りおもむろに脇に差し込む。
冷やりとする感触がどこか懐かしい。

きれいな部屋なんですね〜、とかなんとか言いながら間を持たせていると「ピピッ」と測定完了の音がしたので、取り出して体温表示をみた。


「36.8℃!」


ほぼ平熱ではないか、多少大目に見ても微熱ってとこだろう。
冷静と発熱の間には確かな相関関係がある、とオラホは悟った。


「あ、こ、これは、あれ〜?家で測った時は確かに39℃あったんですけど〜」


これでは、まるで仮病を使って授業を抜け出した不良少年ではないか。
いや、少年ならまだ許される。
人生経験も浅い、尻に蒙古班がある少年なら可愛げもある。
しかしオラホは三児の父親で、ここは保険室ではなく大学病院なのだ。
「さささ〜」と血の気が引く音が聞こえた気がした。
しかし、看護婦は動じなかった。
表情一つ変えることなく、口元には軽く笑みを浮かべて言った。


「はい、大丈夫ですよ〜。」


は?大丈夫なの?
今度は急に懺悔を許された気分になってきたぞ。
白衣の天使とは、彼女のことだったのか…。
十字架しょってゴルゴダの丘へ向かうイエス・キリストがベロニカから水をもらった時の気持が少し分かった瞬間だったかも知れない。

これは後から分かったことだが、この病気の熱は上がったり下がったりすることもあるらしい。
ふっ、まだロマンチックがおさまらないようだ。
んで、その天使は上気しているオラホに、いくつか注意点を示した。

1.むやみに病室を出ないこと。

2.トイレは、大便での使用はOKだが、小便は尿瓶(しびん)ですること。

3.熱が出た時は、解熱用の座薬を投薬するが38.6℃を超えてから行うこととする。

4.3に関しては、ナース・コールで対応するので、逐次自分で体温を測ること。

5.下腹部(キャン玉袋)は、氷嚢(ひょうのう)で冷やし、中の氷が溶けたら交換するので、それもナース・コールすること。


ふむふむ、なかなか刺激的なメニューだ。
みなすべて初体験だもんな〜、とか、どこか風俗店にでも入った気分で聞いていたオラホに尿瓶と氷嚢を渡して彼女は病室を出て行った。

ベットの上で、彼女の後姿を見送ったオラホは、手にしたアイテムを点検し始めた。
まず、尿瓶。
ほう、これが尿瓶か、父親が入院している時に見たことがあった。
あの時はガラス製だったが、それはポリエチレンでできているようだった。

一方の氷嚢というと、普通はおでこにあてがう為に上から吊るすひもが付いているものだが、これは伸縮性のネットにくるまれたゴムボール状になっている。
ん?これでお股を冷やす?
あ〜、パンツに入れとけ、ってことね。
どれどれ。
お、来る来る〜、冷える気がしてくるぞ〜。
平熱となるとがぜん食いつきも違ってくるものだ。
これで悠々自適の入院生活が始まるぜ。



…と、この時は思っていた。






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